いざ、その時が来てしまったらどうすれば良いのか。どうすべきなのか。相続とは、一生のうちに何度も経験するものではありません。だからこそ、わからないことや迷うことがあって当然なのです。今回の記事では具体的な事例をもとに、やるべきことを解説していきます。保存して見返すことができるようにしておきましょう。
いつまでに?何をすればよいのか
どのような手続きを、いつまでに、どのような手順で実行していくことが適切なのでしょうか。すべて他人任せにはしていられないけれど、当事者としては、ご家族や親族がお亡くなりになったことは大きな出来事であり、ことばにできないほどの感情に満たされることかと思います。 まずは、下記のような時系列に沿って読み進めてみてください。わかりやすく表にまとめまてあります。上から順を追って手続きを確認しておきましょう。
手続き | 期限 | 手続き内容 | 注意点 |
---|---|---|---|
社会保険の資格喪失手続き(会社員だったとき) | 5日以内 | 勤め先が手続きする | 1.期間が短いため、できるだけ早く勤め先に連絡する |
死亡届の提出 | 7日以内 | 医師の死亡診断書をもとに市区町村の役場に提出する | 1. 提出期限を過ぎると罰則がある 2. 死亡診断書のコピーを複数用意しておく(相続手続きに必要) |
火葬許可証と埋葬許可証の発行 | 7日以内(通例として) | 市区町村の役場に死亡届、死亡診断書を提出する際に、あわせて申請する | 1.役場で火葬許可証を取得し、それに火葬場で火葬済印をもらうことで、以後は埋葬許可証としても使用可能になる |
年金受給権者死亡届の提出 | 10日以内(国民年金は14日) | 年金事務所に提出する | 1.左記の年金事務所のURLからお住まいの事務所を確認する。※電話相談窓口(日本年金機構)があるので、困ったら電話する。 |
世帯主の変更届の提出 | 14日以内 | 市区町村の役場で住民異動届を提出する。死亡届と同時に提出するのが良い | 1.異動届の「世帯主変更」に〇をつける。 2.世帯主変更届が不要な場合がある。①死亡した世帯主以外の世帯員が存在しない②死亡した世帯主以外の世帯員がひとり③新たな世帯主とされるひとりの人物以外の世帯員が15歳未満の子どもである場合 |
国民健康保険被保険者証の返却 | 14日以内 | 市区町村の役場に返却する。国民健康保険資格喪失届も役場で記入して提出する。 | 1.高齢受給者証があれば返却する。 |
相続人の調査(戸籍調査) | 3か月以内 | 相続人を確定させること。戸籍の収集を主に行う。 | 1.被相続人の出生から死亡までの戸籍を取得すること |
相続財産(遺産)の調査 | 3か月以内 | 相続財産の把握。相続放棄をするか、限定承認をするかの判断基準になる | 1.プラスになる財産だけでなく、マイナスになる財産の両方を調査する。 2.プラス…不動産、預貯金、有価証券(株など)、動産、ゴルフやリゾート会員権、生命保険など。 マイナス…借金、保証債務、クレジットカードの未払い金など |
相続放棄の申述・限定承認の申述 | 3か月以内 | 家庭裁判所に申し立てる | 1. 期限を過ぎると相続放棄と限定承認が困難になるが、相当な理由がある場合に、認められる場合がある。 2. 相続放棄…相続財産に係る全ての権利義務を放棄すること 3.限定承認とは相続する財産の限度内で借金などの債務を引き継ぐこと |
放棄の期間の伸長 | 3か月以内 | 家庭裁判所に申し立てる | 1. 期限を過ぎる前に伸長の申し立てをすることができる。特別な事情がある場合に伸長が認められることがある。 |
準確定申告 | 4か月以内 | 1月1日から死亡までの間に被相続人に一定の所得があった場合、被相続人の死亡当時の納税地の税務署に申告する | 1. 申告を怠ると延滞税が発生すること 2. 年金収入が400万円/年や個人事業主。土地や建物を売却していた場合などなど |
相続税評価額の計算・納付義務の確認 | 10か月以内 | 相続税の支払いが発生するのかの判断。金銭価値を把握する | 1.相続財産の評価方法は財産ごとに決められている。 |
遺産分割協議書の作成 | 10か月以内 | 相続人が確定し、相続する財産が確定したら、右の注意点をもとに作成する(遺産分割協議が不要な場合あり) | 遺産分割協議が不要 1.法定相続人が法定相続分で相続する場合 2.遺言書に基づいて相続する場合 3.相続人が一人の場合 遺産分割協議が必要 1.法定相続分以外の分け方で相続をする場合 2.被相続人が遺言書を残していなかった場合 3.遺言書に基づかない相続をする場合 |
相続税の申告・納付 | 10か月以内 | 被相続人の最後の住所を管轄する税務署に、相続税の申告書を提出し、納付する | 1. 期限を過ぎると延滞税や加算税が発生。本来より少ない額で申告をした場合は過少申告加算税が発生する 2.相続人の住所地を管轄する税務署ではない |
・死亡届の届け出方法(参照:法務省)
・死亡届・死亡診断書書式(参照:厚生労働省/PDF)
・年金を受けている方が亡くなったとき(参照:日本年金機構)
・相続税評価額の計算方法(参照:国税庁)
☆特に相続放棄と限定承認の期限までに、相続人の調査と特定、相続財産の調査は完了させておきましょう。
☆建物の相続税評価額の場合は、自身で利用している建物の相続税評価額=固定資産評価額ですが、
賃貸に出している建物の場合は、相続税評価額=固定資産評価額×70% です。
例えば、節税のために「賃貸に出すマンションを買いましょう」というフレーズは、このように相続税評価額を低く抑えるためなんですね。
まとめ
ご家族が亡くなったときの相続手続きは、多くの手続きと期限が伴います。まずは、死亡届の提出から始め、相続放棄や準確定申告、相続税の申告・納付など、丁寧に、順次行っていきましょう。各手続きには注意点があり、専門家に相談することでスムーズに進めることができます。この記事を参考に、適切な手続きを行い、大切な家族の遺産を守りましょう。
このように、相続手続きは複雑で大変ですが、一つ一つ丁寧に進めていくことで、トラブルを避けることができます。何か不明な点があれば、行政書士や税理士などの専門家に相談することをお勧めします。