相続問題を説明するイラスト。邸宅と電卓で相続を想起するシーン。

相続で土地を受け継いだものの、「管理が難しい」「遠い・・・」「犯罪に使われたら困る」などの理由手放したい場合に利用できる制度が「相続土地国庫帰属制度」です。この制度を活用すれば、相続した土地を国に引き渡すことで、維持費や税金の負担から解放されます。本記事では、この制度の概要や利用条件、費用、手続きについて詳しく解説します。不要な土地を持て余している方はぜひ参考にしてください。

1. 「相続土地国庫帰属制度」とは?土地を国に引き渡せる仕組み

ここ最近、土地の活用ニーズが低下しています。その結果、いざ土地を相続したけど、やっぱり手放したい。。。という方が増えています。これらが、相続の際に登記がされないまま土地が放置される「所有者不明土地」が発生する要因にもなっているようです。
この「相続土地国庫帰属制度」とは、相続や遺贈によって取得した土地を、条件を満たせば国に帰属させることができる制度です(国庫に帰属といいます)。相続人はこの制度を利用することで、土地の管理義務や将来的な固定資産税などの負担から解放されます。

驚く猫

そんな制度があったのにゃ?

2. 制度を利用できる人の条件とは?

この制度を利用できるのは、相続や遺贈により土地を取得した個人で、特定の条件を満たしている方です。例えば以下のような方が対象になります。

  • 相続した土地が遠方にあり、管理が困難な場合
  • 土地に建物がなく、維持するメリットが少ない場合
  • 相続税の支払いが困難で、土地を手放すことを考えている場合
  • 土地の管理費や固定資産税が高額で、経済的負担が大きい場合
  • ※注意!前贈与を受けた相続人、売買などによって自ら土地を取得した人、法人などは、相続や遺贈で土地を取得した相続人ではないため、申請ができません。

この制度を利用するためには、土地が特定の要件を満たしている必要があります。

3. 国に引き渡せる土地の要件とは?

「相続土地国庫帰属制度」を利用して土地を国に引き渡すためには、土地が以下の要件を満たしていることが求められます。

申請段階で下記の要件を満たすこと
  1. 有害物質や汚染がない土地であること
    環境汚染が認められる土地は、国による引き渡しの対象外です。
  2. 適切に管理されている土地であること
    荒廃した土地や放置された土地は引き渡しの対象外となります。最低限の管理が行われていることが必要です。
  3. 法律上の制限がない土地であること
    建築禁止区域など、法律で利用が制限されている土地は対象外です。
  4. 第三者の権利が設定されていない土地であること
    抵当権や地役権など、第三者の権利が設定されている土地は引き渡しができません。
  5. 建物がたっていない土地であること
  6. 境界が明らかでない土地や所有権に争いがない土地であること
  7. 墓地内の土地でないこと
申請後でも下記に該当すると不承認になります。
  1. 一定の勾配・高さの崖があって、管理に過分な費用・労力がかかる土地
  2. 土地の管理・処分を阻害する有体物が地上にある土地
  3. 土地の管理・処分のために、除去しなければいけない有体物が地下にある土地
  4. 隣接する土地の所有者等との争訟によらなければ管理・処分ができない土地
  5. その他、通常の管理・処分に当たって過分な費用・労力がかかる土地

これらの要件を全て満たした場合に、土地を国に引き渡すことが可能です。通常の管理や処分をするに当たり多くの費用や労力が必要になるので引き取りの対象外ということですね。

4. 相続土地国庫帰属制度を利用する際の費用

この制度を利用するためには、一定の費用が発生します。主な費用は次の通りです。

  • 審査手数料(申請するとき)
    1筆の土地当たり1万4000円  ※一筆とは登記上の土地の個数を表す単位
  • 負担金(法務局による審査→承認されると)
    土地が引き渡し要件を満たしているか確認するための調査費用が必要で、通常は数十万円かかります。

(※1)
 市街化区域とは、すでに市街地を形成している区域又はおおむね10年以内に優先的かつ計画的に市街化を図るべき区域をいいます(都市計画法(昭和43年法律第100号)第7条第2項)。
(※2)
 用途地域とは、都市計画法における地域地区の一つであり、住居・商業・工業など市街地の大枠としての土地利用が定められている地域をいいます(都市計画法第8条第1項第1号)。
(※3)
 農用地区域とは、自然的経済的社会的諸条件を考慮して総合的に農業の振興を図ることが必要であると認められる地域として指定された区域をいいます(農業振興地域の整備に関する法律(昭和44年法律第58号)第8条第2項第1号)。

☆詳しくは法務局ホームページを参照

これらの費用を考慮して、制度を利用するかどうか慎重に判断することが重要ですね!

まとめ:不要な土地を手放して、安心して相続を完了させよう

「相続土地国庫帰属制度」は、管理が難しい土地を手放すための有効な手段です。次の記事では具体的な申請方法やその流れを解説します。相続したものの、その土地の管理が難しい、何か犯罪に使われたりと心配することも多いでしょう。知っておくだけでも安心な情報を仕入れておきましょう!