相続問題を説明するイラスト。邸宅と電卓で相続を想起するシーン。

前回の記事でご紹介した、相続した土地を維持管理するのが難しい、手放したいと考える方に注目されている「相続土地国庫帰属制度」。前回は制度の紹介と費用についてお話しました。今回はその続き「法務局への相談、申請書類の作成と提出、承認後の負担金納付の流れ」を分かりやすく紹介しますので、相続土地の処分にお困りの方はぜひご一読ください。

1. 手続きの流れ

「相続土地国庫帰属制度」を利用するには、以下の手順に従って手続きを進める必要があります。

① 法務局への相談

相続土地国庫帰属制度の手続きの流れの画像

最初のステップは、法務局への事前相談です。ここでは、相続した土地が制度の対象となるかどうかを確認します。対象外となる土地の条件や、国庫帰属にあたっての基本的な要件について法務局がアドバイスを提供してくれます。

相続相談する前に準備しておくもの
  • 相続土地国庫帰属相談票
相続土地国庫帰属相談票
  • 相談したい土地の状況についてのチェックシート
相談したい土地の状況についてのチェックシート画像

相談票やチェックシートの書き方は法務省のホームページをご確認ください。

  • 土地の状況等が分かる資料や写真
    • 登記事項証明書又は登記簿謄本
    • 法務局で取得した地図又は公図の写し
    • 法務局で取得した地積測量図
    • その他土地の測量図面
    • 土地の現況・全体が分かる画像又は写真
図面を引く女性。行政書士。
相談の方法

相談は、事前予約制で1回30分です。法務局・地方法務局(本局)の窓口で対面相談又は電話相談ができます。
相続土地国庫帰属制度の事前相談の予約は、「法務局手続案内予約サービス」を利用しましょう。

そして、承認申請をする土地が所在する都道府県の法務局・地方法務局(本局)の不動産登記部門(登記部門)で受け付けています。支局・出張所では相談を受け付けていないの要注意です。

法務省「法務局・地方法務局所在地一覧」で検索してみてください。

※なお、引き渡したい土地が遠すぎて大変、、など承認申請をする土地が所在する法務局・地方法務局(本局)での相談が難しい場合は、近くの法務局・地方法務局(本局)でも相談できるので安心ですね。

相談できる人

土地の所有者本人だけではなく、家族や親族でも相談できます。

※相談者と関係のない土地の相談はできません。当然といえば当然ですね。

相談できること

「所有している土地を国に引き渡すことができるかどうか知りたい」や、「申請書類や添付書類に漏れがないか確認してほしい」などの相談ができます。

相談にのる行政書士。

② 申請書類の作成・提出

次に、必要な申請書類を作成して法務局に提出します。申請には、土地の登記簿謄本、地図、申請者の身分証明書などの書類が必要です。これらの書類に加えて、土地の現状や相続の状況に関する詳細な情報も提供する必要があります。なかなかに、種類が多くて大変だと思います。
ここで重要なのは、申請書に不備がないように注意することです。不備があると手続きが遅れるだけでなく、再提出が必要になる可能性もあります。また、手続きに不安がある方は、行政書士や司法書士などの専門家に依頼することも一つの手です。専門家のサポートを受けることで、スムーズに進めることができます。

書類を渡す女性。行政書士。
必要書類の一覧
新たに自分で作成する書類
  • 承認申請書
  • 承認申請に係る土地の位置及び範囲を明らかにする図面
  • 承認申請に係る土地及び当該土地に隣接する土地との境界点を明らかにする写真
  • 承認申請に係る土地の形状を明らかにする写真
用意する書類
  • 申請者の印鑑証明書
  • 固定資産税評価額証明書(任意)
  • 承認申請土地の境界等に関する資料(あれば)
  • 申請土地に辿り着くことが難しい場合は現地案内図(任意)
  • その他相談時に提出を求められた資料
申請先について

申請するのは、その土地の所在地を管轄する法務局・地方法務局の本局です。支局・出張所には提出できませんので注意してください。。提出は、窓口に持参する方法と、郵送による方法があります。
そして、申請書には審査手数料の額に相当する収入印紙を貼り提出します。申請後は、申請を取り下げた場合や、審査の結果、土地を引き取れないと判断された場合であっても、審査手数料は返ってきませんのでご注意ください。

③ 承認後の負担金の納付

申請が承認されると、最後に「負担金」の納付が必要です。負担金とは、国庫に帰属された土地の管理に必要な費用を補填するためのものです。土地の面積や状態によって負担金の額は異なりますが、これは手続きの一環として必須となっています。申請された土地についての審査が行われた結果、国が引き取れると判断した場合、国庫帰属の承認の通知とともに、負担金の納付を求める通知が申請者に届きます。 

申請者は負担金の納付を求める通知に記載されている負担金額を、当該通知が到達してから30日以内に納付する必要があります。負担金が納付された時点で、土地の所有権が国に移転します。土地の所有権移転の登記は国が行いますので、申請者が登記を申請する必要はありません。
なお、負担金の納付を求める通知が到達してから30日以内に納付しないと、国庫帰属の承認の効力が失われてしまいます。失効させてしまった場合、再び同じ土地の国庫帰属を希望するときは、最初から申請し直す必要がありますので、注意してください。

驚く画像で制度の厳しさを表現する。

けっこうシビア。。。

要チェック! 令和6年4月1日から相続登記の申請が義務化されました

親が亡くなるなどして土地や建物、マンションやアパートなどの不動産を相続したら法務局で相続登記をする必要があります。
令和6年(2024年)4月1日より前の相続でも、未登記であれば、義務化の対象となります(3年間の猶予期間あり)。
正当な理由がないにもかかわらず、不動産を取得したことを知った日から3年以内に相続登記を行わなかった場合、10万円以下の過料の適用対象となります。

正当な理由の例

(1)これまで相続登記を放置していたため相続人が極めて多数により、戸籍謄本などの必要な資料の収集や他の相続人の把握に時間がかかる
(2)遺言の有効性や遺産の範囲などで争っている
(3)申請義務を負う相続人自身が重い病気にかかっているなど

3. まとめ

相続した土地を手放したい場合、「相続土地国庫帰属制度」を利用することで、その管理負担を軽減することができます。しかし、この制度を活用するには、法務局への相談から申請書類の作成、負担金の納付まで、いくつかの重要なステップを踏む必要があります。今回は二つの記事に分けてご紹介しました。

土地の相続に関してお悩みの方は、早めに行動し、専門家のサポートを得ながらスムーズに手続きを進めることが大切ですね。この記事では、相続土地国庫帰属制度の全貌と手続きの流れを解説しました。制度の利用を検討している方は、このガイドを参考に、スムーズな手続きを目指しましょう。

行政書士画像