相続問題を説明するイラスト。邸宅と電卓で相続を想起するシーン。

相続が発生すると、相続財産の調査が必要になります。相続財産の調査とは、「被相続人の財産を正確に把握して、財産額を確定すること」です。調査結果を根拠として、遺産分割協議や相続放棄すべきかの判断。そして相続税額の特定し把握することにあり、大変重要です。相続財産を調査することでトラブルを避け、円滑な相続手続きが可能になります。本記事では、相続財産調査の目的や具体的な手順、費用、調査の進め方をわかりやすく解説します。

相続財産調査の全体像

step1 相続財産の種類を知ること
step2  相続財産を特定すること
step3  被相続人が死亡した時点での財産額を把握すること
step4 財産目録を作成すること

故人しか知らない財産、相続人が探しきれなかった財産があとで発見されたり。。。
他の相続人同士のトラブルにつながったり、相続税を過少申告することでペナルティが課されたりと注意すべき点が多くあるのが特徴です。まずはこの4つのステップを理解して順番に調査してください。

相続財産の3つの重要性とは

相続財産の調査は、以下の3つの目的から非常に重要です。

  1. 遺産分割協議に使う
    正確な財産を把握したうえで、遺産分割協議を行うことが、相続人間の争いを防ぎ、手続きをスムーズに進めることにつながります。
  2. 相続放棄すべきかの判断に使う
    プラスの財産だけでなく、マイナス財産(借金など)がある場合、マイナス財産のほうが多額になるようなこともあります。そのようなときに相続放棄を検討しますが、プラスもマイナスも正確に把握することも重要です。相続放棄すべきか?の判断には財産調査が不可欠です。
  3. 相続税の申告対策
    相続税の申告には正確な財産評価が必要です。相続財産の時価額が一定額になると、相続税の課税対象になります。申告期限は10か月以内と決まっているため、早めの財産調査が求められます。
    あとで知らない財産が発覚!なんていうことがあると、申告漏れと判断されて、過少申告加算税が課される場合があるので要注意です。

相続財産調査は3ヶ月以内に終わらせる

相続財産調査は、相続開始から3ヶ月以内に終わらせるのが理想です。これは、相続放棄や限定承認の申告期限が相続があることを知ってから3ヶ月以内だからです。負債が多い場合には相続放棄を検討する必要があり、早期の財産調査がトラブルを防ぐ鍵となります。

相続財産調査の方法・費用・期間

方法:
相続財産には、預貯金、不動産、株式、借金などが含まれます。それぞれの財産を確実に確認するため、銀行口座の履歴を確認したり、不動産登記簿を取得するなどの方法があります。いずれにしても手がかりをたどって地道に確認→調査→財産額の確定を繰り返します。

費用:
財産調査にかかる費用は、調査内容によって異なります。例えば、不動産の調査では数千円から数万円、銀行の取引履歴の発行には数百円〜数千円かかる場合があります。

期間:
相続財産調査には通常1〜2ヶ月ほどかかります。財産の種類や数が多い場合はさらに時間がかかることもあるので、できるだけ早く始めることが大切です。

相続財産調査の方法の4step

相続財産調査を効果的に進めるためには、次の4つのステップを踏みましょう。

《STEP1》相続財産の範囲を理解する

まず、相続財産には、プラスの財産(預貯金、不動産など)とマイナスの財産(借金など)の両方が含まれることを理解しましょう。これを把握することで、正確な相続手続きが可能になります。

預貯金不動産外貨・仮想通貨
株、FX貸付金
家財生命保険金リゾート会員権
プラスの財産例

※生命保険金は受取人の固有財産をみなされ、遺産分割の対象外ですが、被相続人が保険料を負担していた場合は相続税の対象となります。 
※参照:相続税の課税対象になる死亡保険金(国税庁)

借金保証債務住宅ローン
クレジットカードの未払金
マイナスの財産例

《STEP2》相続財産の手がかりを探す

次に、財産に関する手がかりを探します。具体的には以下の書類や情報です。

探すべき情報
預貯金
  • 通帳、キャッシュカード
  • 金融機関からのお知らせ類
不動産
  • 固定資産税の納税通知書
  • 登記済権利証(登記識別情報)
有価証券
  • 取引報告書
  • 配当金の支払通知書
  • 株主総会招集通知書
  • 口座開設時の案内書
借金やローンなど
  • 請求書
  • 督促状
見つけるための手がかり
  1. 代表的な保管場所を探す
    重要書類や通帳は、被相続人の自宅や金庫に保管されていることが多いです。
  2. 通帳の入出金内容を確認する
    銀行口座の通帳を確認し、定期的な入出金パターンから他の財産が判明することがあります。
  3. パソコン・スマホを確認する
    インターネットバンキングや電子データに財産情報が保存されていることもあるため、デジタルデバイスも確認しましょう。
手がかりが見つからない場合
預貯金や保険

第三者(銀行、保険会社)に直接問い合わせて、相続財産を確認することも有効です。
相続人だと証明するために、下記の書類の提示を求められることがあるので、あらかじめ用意しておきましょう。

  • 被相続人の死亡がわかる戸籍謄本、除籍謄本
  • 探す人の戸籍謄本
  • 探す人の本人確認書類
不動産

名寄帳(固定資産課税台帳)を取得します。名寄帳とは、その人が所有している不動産を一覧にまとめたもので、固定資産税の納税通知書には載っていない墓地や私道などの非課税不動産も調べることができます。 その不動産がある市区町村役場に申請する必要がありますが、下記の書類が必要になります。※市区町村にある不動産のみ調査できる(場合によっては複数の役場に確認する)。

  • 申請用紙(各市町村役場のホームページまたは窓口から入手)
  • 亡くなった人の死亡が分かる戸籍謄本または除籍謄本
  • 申請者が相続人であることが確認できる戸籍謄本
  • 申請者の本人確認書類
  • 切手貼付済の返信用封筒(郵送の場合)
  • 手数料分の定額小為替(郵送の場合)

    ※手数料:200円から300円
有価証券(株式)

証券保管振替機構に「開示請求」をして調べましょう。証券保管振替機構(ほふり)とは、株などの保管管理を国の指定を受けて行っている機関です。請求は郵送のみで、多種の書類が必要になります。

借金やローン

相続放棄の判断になるマイナス財産。これはしっかり調べる必要がありますね。調査にあたっては三つの信用情報機関に開示請求することで調べることができます。下記にリンクを貼っておきますので、確認しておきましょう。

信用情報機関調査できる内容開示請求方法(リンク)
 株式会社日本信用情報機構(JICC)消費者金融系の契約内容本人による開示申し込み(郵送等)
 株式会社シー・アイ・シー(CIC)クレジット系の契約内容情報を開示するご本人がお亡くなりの場合
 全国銀行個人信用情報センター(KSC銀行系のローン(住宅ローン等)やキャッシング本人開示の手続き
信用情報機関

step3と4は次の記事で紹介します。後半へつづく。。。