相続問題を説明するイラスト。邸宅と電卓で相続を想起するシーン。

遺産分割の方法には、現物分割、代償分割、換価分割、共有分割の4つがあります。それぞれの方法には独自の特徴があり、実際の分割にあたっては具体的な状況や遺産の内容に応じて選択する必要があります。ここでは、それぞれの分割方法について具体例と注意点を紹介します。

1. 現物分割(げんぶつぶんかつ)

現物分割とは、遺産を物理的に分割する方法です。たとえば、預貯金や現金、土地や建物などの物理的な資産を実際に分割します。

具体例: 故人が口座Aに100万円、口座Bに200万円の預貯金があったとします。配偶者と2人の子供が相続人の場合、全遺産の半分(150万円)は配偶者に配分され、残りの半分(150万円)は子供たちで均等に分けます。具体的には、配偶者が口座Aの100万円を取得し、口座Bの200万円のうち、配偶者が50万円を取得、残りの150万円を子供たちで均等に分けて、各子供が75万円ずつ取得する形になります。現物分割では、土地や建物の分割が難しい場合は、代償分割や換価分割など他の方法で対応することもあります。

注意点: 物理的な資産の分割が困難な場合や、相続人間での調整が難しい場合は、他の分割方法を検討する必要があります。

2. 代償分割(だいしょうぶんかつ)

代償分割とは、相続人の一人が特定の遺産を取得し、他の相続人にはその分の代償金を支払う方法です。この方法は、「この建物は処分したくない」場合など物理的な分割が難しい建物などの遺産相続に対して有効です。

具体例: 故人が評価額2,000万円の建物を持っていたとします。配偶者と2人の子供が相続人で、配偶者が建物を取得する場合、配偶者はその代わりに他の相続人に代償金を支払う必要があります。建物の評価額2,000万円に対して、配偶者の法定相続分は全体の半分、すなわち1,000万円です。残りの半分、すなわち1,000万円を子供たちに均等に分ける必要があります。具体的には、配偶者が建物を取得し、長男と長女にそれぞれ500万円の代償金を支払う形になります。

注意点: 代償金の支払い能力や資産の評価に関する合意が重要です。代償金を支払う相続人がその資金を確保できるかどうかを確認する必要があります。

3. 換価分割(かんかぶんかつ)

換価分割とは、遺産を現金化してから分割する方法です。この方法は、建物などの処分に相続人の同意がある場合に採用されやすく、遺産の売却や換金を通じて、相続人間で公平に分けることができます。

具体例: 故人が評価額2,000万円の建物を持っていたとします。配偶者と2人の子供が相続人で、建物を換価分割する場合、建物を売却して得られる現金を遺産として分割します。売却により2,000万円の現金が得られた場合、配偶者がその法定相続分の半分、すなわち1,000万円を取得し、残りの半分、すなわち1,000万円を子供たちで均等に分けます。具体的には、配偶者が1,000万円を取得し、子供たちがそれぞれ500万円ずつ取得する形になります。

注意点: 換価分割には時間がかかる場合があり、売却価格が予想よりも低くなるリスクもあります。売却プロセスとその結果に対する十分な理解が相続人間で必要です。

4. 共有分割(きょうゆうぶんかつ)

共有分割とは、遺産を一度共有状態として分割し、その後で具体的な利用方法や持分割合を決定する方法です。これは、遺産の物理的な分割が難しい場合に利用されます。

具体例: 故人が評価額2,000万円の土地を持っていたとします。配偶者と2人の子供が相続人で、土地の分割が難しい場合、土地を共有状態として分割します。たとえば、配偶者が1,000万円、子供たちがそれぞれ500万円ずつの持分を持つ形になります。その後、土地を売却したり、利用方法を決定したりすることができます。

注意点: 共有分割の場合、事前の取り決めをしていても、あとあとになっていざ売却しようとしたり賃貸に出そうとしたときに、共有者間の全員の同意がないと難しく、意見の対立が起きやすい傾向にあるため、あまりおススメできません。ほかの分割方法を検討したほうが良いでしょう。

まとめ

遺産分割には現物分割、代償分割、換価分割、共有分割の4つの方法があります。それぞれの方法には特有のメリットとデメリットがあり、相続人間の合意や遺産の種類によって適切な方法を選択することが重要です。現物分割は物理的に分割する方法、代償分割は特定の遺産を取得する代わりに代償金を支払う方法、換価分割は遺産を現金化して分割する方法、共有分割は遺産を共有状態として分割し、後で具体的な利用方法を決定する方法です。各方法の特徴を理解し、具体的な状況に応じて最適な分割方法を選ぶことが、スムーズな遺産分割につながります。どの手段を選んだらよいか?行政書士などの専門家にまずは相談しましょう。